DXに限らず、いわゆるIT周りのあれこれについて、それで生活の糧を得ているわけですけど、最近仕事で失敗しまくっていることもあってか、入社期の「最新の科学技術の革新で世の中をよりよくしたい!」みたいな気持ちがどんどん消えているのを感じています。
科学技術が進んでいるはずなのに、仕事はどんどん難しくなる一方で、労働時間も減るどころか増えていて、「おい!ケインズ!週15時間労働で済むってのいつになったら達成されるの?」「そもそも共働きしないと子育てできねー時点で詰み確定じゃん」という気持ちです。
DX化とかIT化で省力化とか人材不足解決!とか社会の諸問題を解決しようとしているのはいいんですけど、何でもかんでも見境なしにIT化・DX化していて、私の身の周りでも「で……保守はどうするんですか?」みたいな感じになっています。
例えばよく話題として挙げられるローコード・ノーコードについては、結構まずいと思っています。いわゆる「秘伝のタレ」と化してろくにメンテナンスされていないエクセルのマクロやVBAが日本中・世界中に無数にあると思いますが、これらは良くも悪くも世界中にシェアを持つ製品だからまだいいんですよ。
問題はローコード・ノーコードはそれを提供する会社が飛んだらどうするんですかね?というもので、軽微なものだったらまだしもそれが業務の根幹まで入っていた場合、なかなかひどいことになりそうです。
ローコード・ノーコードによるソリューションの賞味期限が切れたあたりで、それらをリプレイスする商売が流行るかもしれませんが、各サービスの規模がExcel、VBAほど大きくないので、それらよりリプレイスは難しいかもしれません。
サービスとして使われればいいですが、そうでもないものをなぜか残業して作る、ということがあります。家に例えると誰も住む予定のない家を「早く作れ」とせかされて作るイメージ。
となると、おそらく、いや確実にメンテされないゴミが将来的に大量に発生することは不可避で(これは後述するメンテ要員が不足することも要因としてあります)、となると「おれたちは頑張ってゴミをつくっているのだな」という気持ちになっています。
メンテにはコストがかかる
なんでもかんでもDX・DXで、システム化したはいいものの、問題は世の中が(少なくとも、本邦の社会が)「メンテナンスにはコストがかかる」ことを認識していない可能性が高い、というところです。メンテナンスは「動いて当たり前、止まったら怒られる」の減点方式で評価されることが多いですから、やりたがる人はあまりいません。
乗用車の車検や自賠責という制度がどのようにして成り立ったのかは知りませんが、おそらく普及していく過程で多くの人命が失われたり、社会的損失が無視できなくなったから、法制度としてそれを整備していったのでしょう。
最近もシステムトラブルで銀行の振込機能が止まったりしましたけど、システムトラブルが起こったからと言ってそれを叩いても、根本の問題は解決せず、結局受益者がうっすらとコストを負担する方向(金銭を払う、あるいは不都合を受け入れる)に進むくらいしか、解決策はないのだなあ、と思います。
発注側にも責任がある
そもそも、ITシステム開発が黎明期から50年間経っても、いまだに炎上が絶えない(私自身がまさにその渦中にいるから)のは、そもそもITシステム開発の発注者・受注者が手法を身につける機会が無いことが往々にして多い、というのがあります。
これまた何かの記事の受け売りとして、個人向け一戸建ての建築については、施工側の技術書や方法論が確立しており、また発注側となる個人も「理想の家を作るには?」といった内容の雑誌や書籍が書店でいくらでも売られています。
かたや、ITシステムの開発は、受注者側の技術書や方法論は溢れてる一方、発注者側の書籍というのは不思議なことにあまりありません。
おそらく、その情報のギャップ、丸投げ体質や情報不足がITシステム開発失敗の大きな要因になっているのでしょう。
これまた個人向け一戸建ての話に例えると、数百万・数千万の住宅ローンを背負って建てる家だからこそ、失敗をできるだけ避けようと、綿密に計画を練り、余裕のあるスケジュールで進めるはずです。
ところがITシステムでは、家に例えると大体作りあがってから「あ!やっぱり南側のベランダ無しで、その分東側にバルコニーでおねがいします!w」みたいなことが往々にしておきがちです。それで受注側の現場監督が無理してその無茶ぶりを受け入れ、それが原因で家全体に不具合が出て、発注元が「なんで不具合が出るんだ!言ったとおりにできてないじゃないか!」みたいなことが起きがちです。「急な仕様変更→それでしわ寄せが行ってバグ発生→発注元激怒→バグをつぶすもぐら叩き、遅れる納期、増えるばかりの製造原価」という感じです。
それより人がいない
何かで読んだ記事の受け売りを多く含んでいる意見として、「そもそも実装できる人の数がシステムに対して圧倒的に足りないのでは?」というのがあります。
金はあって、やりたいこともあって、資料もある。でも、コードを書ける人がいない。プロダクトができても、それを保守する人がいない。なのに、システムはどんどん増え続ける。
といった感じで、発注側としては、金をいくら持っていても、プロジェクトが成功しないどころか、そもそも請けてくれるところがいない、という世界になりつつあるのではないか、と思います。
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