前置き
教員養成の話を書きましょう。1万字超えてしまったので、分割して投稿します。教職課程から教員養成系大学院に進んだのに教員にならず、教育とは関係のない仕事に就きました。
大学院の修了生の90%は教壇に向かっていった訳ですが、私は毎日こうやってPCに向かう道を選びました。
そういうレアキャラから見えた教員養成課程の内側と外側というのは、そこそこ意義があると思います。
私は国語の中学校・高等学校専修免許を持っています。
この専修免許というのは聞き慣れませんが、大卒が一種免許で修士卒が専修免許です。
現職で大学院に行くには?
現職の教員が大学院に行くには、
- 休職する(お給料なし)
- 派遣制度を使う(お給料もらえる)
という2つのパターンが存在します。
おすすめは、実は前者です。お給料がないのに、です。
というのも、後者は人間をやめる必要がありますし、2年で修了するにはそれこそ家族や運に大きく左右されます。
後者の「派遣制度を使う」の何がきついか書きましょう。
現職の教員が教員養成系大学院に行く主目的は、専修免許を取ることです。
ところが、教員養成系大学院には2つあり、どちらのタイプに進学するかで大きく難易度が変わってきます。
- 教職大学院
- 教育系大学院修士課程
教職大学院というのは、いわゆる教育大や駅弁教育学部や私立教員養成系教育学部の上部組織です。
あくまでも実践家、専門職を育成するのが主目的ですから、修士論文を書かなくても修了できてしまいます。
実践レポートというので代替できてしまいますし、そういうのは現場経験のある教員向けと言えます。ですから、現職教員にとってはこちらの方が格段に難易度が低いです。
学位も「教職修士(専門職)」で、ノリとしてはロースクールとか公共政策大学院とか会計大学院みたいな感じ。
一方、教育系大学院修士課程は、修士論文を書かないと絶対に修了させてもらえません。
単位を充足させて、修理論文が審査を通過するのが修了の要件になっています。
こちらの学位は「修士(教育学)」になります。
大概の修士課程では、M1(修士1年)で単位を全て取り切って、M2の1年間かけて(もっとも、M1の夏休みあたりから着手し始めるのですが)修論を書き上げます。
現職教員派遣制度の問題点は?
ところが、現職の教員が派遣制度を使った場合、M2の生活がひじょ〜〜〜に厳しいです。
というのも、M1は授業がありますから、所属校の教壇に立つことはありませんが、M2になるとそういった猶予をしてくれない自治体がいくつかあります。
つまり、「ただでさえ忙しい教員としての仕事をしながら」「修士論文を書き上げ」「なおかつ家族の面倒も見る」という、超人、スーパーマン(今はポリティカル・コレクトネスでスーパーパーソン?)になる必要があります。
私はM2でインターンで週3〜4フルタイムで働きながら(直前期はインターンを免除してもらいましたが)修論を書きましたが、なかなかに大変でした。
況や、派遣制度を使っている現職教員は、とんでもないことになってしまいます。
現に、私の知っている方は、「週数〜十数コマの授業を持ち」「校務もやりつつ(さすがに部活は配慮してもらったようですが)」「修士論文を書きながら」「自宅から大学まで高速で片道1.5時間以上」「家庭では子供の面倒を見る母親」という、もう、いつ寝ればいいんですかこれ?みたいな感じで、案の定留年されて、3年目で修了となりました。これは仕方がありません。
その方から話を聞くたびに、ストレートで修士になった同級生たちと「〇〇さん、死んじゃうよそれ・・・」みたいな話をし合っていました。今もお元気だと良いのですが。
ということで、現職の教員が専修免許を取るなら、よっぽどこだわりがない場合は教職大学院に休職して行くのがおすすめ、ということになります。時間的・精神的余裕が全然違います。お金もその分かかりますけど。
ちなみに中学の体育の先生は、私が卒業したタイミングで上越教育大に進学され、今では現場を離れ何故か市のスポーツ推進課にいます。よくわかりませんね。
最初から専修免許を持っていれば、この在職中に現場を離れるということがなくなるというメリットがあります。
一方、一度現場のリアルを知ってから大学院に入ることで、問題意識を持って研究できる、というメリットもあるわけで、悩ましいところです。
専修免許のメリットってあるの?
実益という点で見ると、専修免許そのもののメリットは数少ないです。
まず、大体の都道府県では、校長・副校長・教頭といった管理職になるために専修免許が必須となっています。
もっとも、今は管理職になりたがる若手というのは絶滅危惧種です。
管理職になりたいなあと思ったら、そのタイミングで休職して弊学なり上越教育大・兵庫教育大・鳴門教育大なり行けばよいのではという話です。
もう一つのメリットは給与がちょっと高い水準からスタートするという点。
といっても修士2年分の学費+生活費+2年教育公務員として働くことで得られる収入を考えると、生涯収支は1000〜1500万くらい少なくなると思います。
とはいえ、有名私立や有名国立附属校だと専修免許を持っていることが採用の要件になっていたりしますし、(教育大や駅弁教育学部の実務家)大学教員としての採用は修士号が必須です。
枠は狭いですが、そちらのルートを狙うなら、教職大学院はNGです。
あとは、これは自治体によりますが、大学4年/修士1年時点で採用試験に合格すると、専修免許取得を要件としてそれまで採用猶予してくれる自治体もあります。
仕事は決まっているのに大学院にも行ける、という恵まれたルートです。私の同級生・後輩にもちらほらいました。
「〇〇大学大学院修士課程単位取得満期退学」という、超絶レアな履歴書になります。
「博士後期課程単位取得満期退学」=博論書けませんでした、は文系研究者では結構いますが。
……とまあ、教員でも専修免許の実利は自己満足(自信を持って指導できる?)が最大の効用なのではないか、という説すらあります。
もちろん、教員にならない私のような非教育産業の会社員にとっては、全くもって意味のない資格という形になります。
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