教育について(その3)

2021-06-30

教育 説明

教育について(その2)の続きです。

倍率のボーダー

教員になるためには教員採用試験を受験して、最終合格する必要があります。

基本的に筆記試験は足切りに過ぎず、面接試験が本ちゃんです。

また、小学校<中学校<高等学校の順、大都市圏<小規模県の順で倍率が上がってきます。

教科別では、メジャー教科(数学・英語)<国語・理科・保健体育<社会科・その他実技の順で倍率が上がっていきます。

もっとも、これもあくまでも一般的な話で、欠員補充スタイルで募集は行われるので、この県のこの教科は今年は採用なし、ということはザラに起こるわけです。


近年、教員の過酷な労働環境がメディアを賑わせ、さらに大量採用世代の退職が相次ぎ、教員採用試験の倍率は低くなりがちです。

あまり表では語られにくいですが、教員採用の倍率は「3倍」というのが一つの目安となります。3倍を切ると、いわゆるフリーパス状態になります。

なぜかというと、特に大都市圏では地元県と併願で受験するからです。

隣接県では試験日が同じ=併願できないのですが、例えば福井県と大阪府、新潟県と東京都を受験することは可能なわけです。

その場合、地元県に合格したら大都市圏は蹴るでしょうから、したがって上位合格層は大都市圏を蹴りがちです。


教員不足は止まらない

また、教員の年代というのは均一ではなく、大量採用層が次々と退職を迎える中、新規採用がそこまで増えている、というわけではありません。

大都市圏では教員不足で、特定の科目の授業が実施できない公立学校というのがちらほら出つつあります。この原因は2つあります。


採用を絞っているから

一つは身もふたもないのですが、採用そのものを絞っているからです。

子どもの数というのは、これから移民を大量に入れない限り、際限なく減り続けることは人口動態調査・人口ピラミッドを見れば中学生でも分かります。

ところが、教員というのはリストラが「今のところ」存在しません。

ですから、将来的に教員が余る可能性を鑑みると、過渡期は採用を絞って、その分非正規雇用で穴埋めすればええやん、という話になってしまいます。

いつかの民間企業がやった手口を周回遅れで公立学校もやっているということです。


非常勤講師が捕まらない

で、もう一つは、その穴埋めとしての非常勤講師を確保するのが難しくなりつつある、というところです。

非常勤講師の調達先は大きく分けて2つです。

  • A. 教員採用試験に落ちて経験を積もうとしている人(もっとも、最近は教採に落ちると常勤講師のポストを紹介されることがあります。これは後述)
  • B. 定年を迎え、年金まで家計の穴埋めを試みようとしている人

ところが、現在この非常勤講師のAが全然捕まりません。

というのも、非常勤講師になる層を常勤講師で非正規雇用しているためです。

この常勤講師、勤務時間は正規職員と同じ、しかも部活の顧問も持たされて勤務自体は正規採用の教員とほとんど変わりません。

ですがボーナスはなく、年度単位の雇用なので来年以降の保証はありません。

管理職に刃向かえば即刻切られますから滅多なことはできません。

一応、彼ら常勤講師は正規採用を目指して教員採用試験のために経験を積む、という形になっており、決して珍しい存在ではありませんでした。

それが、先述の「将来的に教員が余る可能性を鑑みると、過渡期は採用を絞って、その分非正規雇用で穴埋めすればええやん」の調整弁として戦力カウントされるようになってしまいました。

その上、「常勤講師で正規採用と同じ仕事してるのに、いや、だからこそ激務で教採の勉強時間が取れず、それで教採に落ちてしまう(???)」という、本末転倒な現象が起きています。教採の筆記試験は教職教養として教育基本法などの関連法や教育心理学などが出題されるのですが、とてもそれらを勉強する時間が取れない、という形になります。

これは、自治体によっては常勤講師は筆記試験を一部または全部免除したり、あるいは下駄を履かせたりしているようです。


一方、非常勤講師B、定年を迎えた層というのも、教育現場では非常に貴重な人材です。

現役の教員の中でも、特に2000年前後の就職氷河期に採用された、現在45〜50歳前後の層というのは採用数が極端に絞られ、おぞましい倍率をくぐり抜けてきた方々です。

彼らは他の年代に比べ絶対数が少ない上に優秀ですから、どんどん管理職として引き抜かれていきます。

そうすると、本来教科主任(その学校の教科のリーダー)やら教務主任(その学校全体の教育計画を立案する、学校のナンバー3or4)になるべき人材がごっそり管理職に取られていくわけです。

脈々と受け継がれてきた現場レベルの経験やら知が、後の世代へと伝わらなくなってしまう、というわけです。

ですから、特にその県である程度名が知られた、指導力の高い教員というのは、定年前になっても「来年以降もお願いしますね(はぁと)」とお話がいく、という形です。

現場レベルでも、そういった大ベテランはありがたい存在のようです。

というかそういったロートル(失礼)が主戦力になってしまうほど、教員の人材不足は深刻です。


自己紹介

Japan
sakurabar(さくらば)。1993年生まれ。修士(教育学)→中小企業でパソコンをいじる日々。ねこがすき。 お問い合わせはsakurabar0701あっとまあくgmail.comまで。 Twitter(@sakurabarss)のDMでも同じアドレスに通知が行きます。

このブログを検索

ブログ アーカイブ

カテゴリ

QooQ