「教育について(その1)」の続きを書いていきます。
残業代ないの知ってた?
教職課程の者にとってはあまりにも常識すぎるのですが、世間一般ではまだまだあまり知られていないようなので改めて書いておきます。
公立学校の教員は残業代がありません。正確に書くと定額制です。
給特法という1971年制定の法律で定められており、給料月額の4%を教職調整額として支給する代わりに、時間外手当や休日手当が一切つかない、という大変にステキ仕様です。
え?部活も?あれだけ土日に遠征とか長期休みに合宿に行ってるのに?という話ですが、部活はもっと闇が深いです。
部活動の闇
まず、部活動の顧問というのは非常にグレーな立ち位置の活動です。
そもそも、部活動というのは「建前上」生徒の自発的な集まりによるもので、部活動の顧問というのはそれを教員が監督する、という形になっています。
ところが、実質的には「生徒全員が何らかの部活に入ることが強制になっている」「教員全員が何らかの部活の顧問になることが強制になっている」「若手教員は何らかの運動部の顧問になることが義務付けられている」という学校がかなり多いです。
さらには、顧問の監督責任問題というのは常にグレーです。
顧問というのもあくまでも「教員が自主的にやっている」という建前なので、平日の夜遅くや休日は勤務にはカウントされません。
そこで何らかの事故が起こった際の管理監督責任はどうなっているのか、曖昧なところがあります。
また、教員の部活動の手当というのは、だいたい3000円前後です。
一時間じゃありませんよ、一日3000円です。
こんなのは昼飯買って、コーヒー買って、練習試合で車出して往復のガソリン代、とかやったらそれだけで消えてしまいます。
要するに休日を潰されるのにほぼタダ働きという感じです。
おっといけませんね、あくまでもこれは教員が「自主的」にやっている活動なので、タダ働きという書き方は相応しくありませんでした、教員たるもの常に生徒のためを思って活動に励まねばなりません(ニチャァ
にもかかわらず、基本的に部活の顧問を断る、という選択肢は、特に公立学校の教員にはほとんど存在しません。
特に、若手(20〜30代)の男性教員が運動部の顧問を断るというのはすなわちほぼすべての管理職・教職員を敵に回すのと同義です。
まず間違いなく干されますし、嫌がらせを受けても何も言えない、というレベルです。
ここ数年でかなりマシになりましたが、それでも「部活の顧問になりたいから教員になった」という人間は若手でも一定数存在しており、部活動信者として睨みを効かせています。
そりゃ自分自身がインハイ出てその競技が好きで指導者になったら、土日もずっと趣味みたいなもんだしなぁ、苦痛じゃないだろうなあ
つまり、自分がやったこともない運動部の主顧問として貴重な土日祝日を返上して、ほぼ無給どころか時には持ち出し(自費でルールブックとか備品とか生徒へのスポドリの差し入れとか)すらすることを「喜び」として感じられるような聖人君子でないと、公立学校の教員はなかなか務まりません。
教職課程のリアル
教職免許を取るには大きく分けて2パターンあります。 教育学部かそれ以外で教職課程を履修するかです。 前者は、◯◯大学教育学部とか〇〇教育大学とかそういうところの話で、教員を育てるための教育機関なので、カリキュラムが教員免許を取ることに特化しています。
ちなみに東京大学などの旧帝国大学や、早稲田大学のような難関私立の教育学部は、あくまでも「教育学」という学問を修める学部なので、教員になる層というのはレアです。
全体の5%もいればいいかな、というレベルで、ほとんどは民間企業やら公務員やらに進んでいきます。 さて、その教育学部のメリットは、特に地元へのコネクションが強く、特に小中学校では無双状態という点。
例えば宇都宮大学教育学部だったら栃木県の小中学校、大阪教育大学だったら大阪府の小中学校、島根大学教育学部だったら島根県の小中学校を牛耳っています。
例外は東京・神奈川・広島で、ここには駅弁教育学部・教育大が存在しません。代わりに東京なら東京学芸大学、神奈川なら横浜国立大学(それにしたって供給量が少ないので、特定の大学が強いとかはなさそう)、広島は旧文理大の広島大学が存在し、幅を利かせています。
ちなみに、高校の場合は、かつては東日本は東京教育大学→筑波大学、西日本は広島大学の旧文理大にあらずんば教員にあらず、という苛烈な学閥が存在しましたが、現在は急速にその影響力を弱めています。早稲田卒が一番多い学校とか普通にありますしね。
もっとも、いまだに県によってはこの学閥が強烈に効果するところがあったりします。
話が膨らみすぎました。教育学部のデメリットは、教員以外の選択肢を取るときにいまだに難色を示されたり、企業ウケが微妙だったりする点。
先述の早稲田大学や旧帝大の教育学部なら、企業の人事も慣れていますからそんなことはありませんが、教員養成系教育学部で民間就職するとなると、「え?小学校と中学校の免許持っているのになんでウチに?」という質問にうまく切り返せないとなりません。
逆にそこを強みにしていくやり方もあるんでしょうけど。
後者の教職課程は、〇〇大学文学部とか理学部とか経済学部とかの、教員養成大学でない大学で教職免許を取るパターンです。 メリットは教員以外の選択肢を取りやすい(というか教員になるのがレア)ところ、大学のレベルにもよりますが高校だと文学部や理学部出身の方が教育大より多いです。 デメリットは履修単位数が増えるという点。 私は文学部言語学科出身なので、専門科目がだいぶ使い回しできましたが、それでも卒業単位数は150単位を超えてしまいました。 また、教職課程で小学校免許は茨の道です。 不可能ではありませんが、同級生で小学校+中高地歴公民の免許を取るために取得単位数が180を超えていた子がいました。 文学部は3年は授業があまりなく、4年はスカスカなのですが、彼は3〜4年もびっしり埋まっていて気の毒でした。 私の時は、履修人数としては、1年次に100人いるとしたら2年次には30人くらいになり(とりあえず履修してみよう的な層が落ちる)、3年次から教職専門演習という実際の授業の検討を行う演習が始まると15人くらいに絞られます。 大体ここまで残ると、教育実習に行って免許が取れるという形。 逆にいうと、そのくらいの気合がない人はやめていきます。賢明な判断だと思います。切るなら早めに切ったほうが良いと思います。 おすすめは2年までに現場へ見学とかボランティアとか行くやつをやって判断することです。 私みたいに教育実習で「あっ、無理だこれ」ってのは遅すぎます。 さて、4年次で教育実習を無事終え、卒業時に教育職員免許状を手にしたとしても、その中でも実際に正規職員の教員になるのは1/3未満。 残りは非常勤になったり大学院に進学したり教員以外の進路を取ったりします。 D進勢(大学院博士一貫制に進学)も、教員免許は保険のために積極的に取得する傾向にあります。 というか教員免許が保険として機能するのはD進勢くらいです。
大学院博士後期なら、自動的に専修免許も取得という形になるので、どこかの私立中高あたりで非常勤で食い繋ぐことができますから。
教育実習
選択肢としては、附属校と協力校と母校があり、原則附属か協力校。
その中でも、母校実習は、大学側に結構文句を言われます。
「それじゃー全然経験になんねーじゃん」ということのようです。
ちなみに、私の指導教員は、高2高3の古典を担当してくださった先生でした。
さて、附属校というのは、弊学の場合、
- みなさんご存知某日本一東大進学率が高い世田谷区の某中高男子校
- 文京区にある中高共学校
- 埼玉県の郊外にある共学高校
です。
ちなみに前者2校では弊学に進学すると、医学科以外は「落ちこぼれ」となります。
この附属校実習のメリットは、みなさん教育実習生慣れしているので、まあ大体つつがなく終わりますし、指導教員も慣れているので良くも悪くも無難に終わります。
附属校のデメリットは毎朝東京まで通勤しないといけないという点です。
東京近郊に実家があるなら良さそうですが。宿舎とかもあるらしいですが、詳しくは知りません。
また、基本的に前者2校の生徒は自分より学力が高いことが多いので、特に数学とか理科とか英語とかはボコボコにされそうで大変です。
協力校というのは大学付近にある公立中高です。
こちらは一番勉強になるというか、実際の教員生活に一番近いのはこれなんじゃないでしょうか。
といっても、大学周辺の公立高校は研究学園都市の関係者が多く、いい子が多いので当てにならないという説もあります。
ちなみに先日TwitterのRTで流れてきましたが、生徒とLINE交換して手を出したりすると一発で終わります。
当然、その大学からの実習受け入れは謝絶となりますし、その県での採用は絶望的だと思っていただいて構いません。
大学の教職担当がガンガンに怒られますし、当該実習生も大学側にガンガンに怒られるだけなら超ラッキーというレベルです。
かなりのペナルティが課されると思っていただいて良いかと思います。
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