最終更新:2021年12月3日
最近のマイブームは依存症で、アル中やギャンブル中毒を嗤う私が、実は重度のTwitter中毒、スマホ中毒、インターネット中毒だった、という落語的オチがありました。そこから、依存症からの脱却について色々調査・考察・実践することをここ数週間はやっています。
スマートウォッチ依存症?
さて、スマホ中毒は『スマホ脳』という、最近の新書の中でも爆発的に売れた書籍でも述べられているように、近年依存性・そしてその危険性が急速に世に知られるようになってきました。
ところが、その派生物であるところのスマートウォッチについては、都会では装用者がちらほら見られるものの、その依存性については、あまり問題提起されていないようです。2021年9月現在では、せいぜいこのブログが引っかかってくるくらいで、その他動画サイトや書籍では情報がありますが、インターネット上ではまだまだ、といったところです。
ということで、本記事では、上記で紹介したブログの換骨奪胎(焼き直しともいう)になりますが、「スマートウォッチの依存症リスク」について、考えていきたいと思います。
先述のブログでも挙げられているとおり、私の考えるスマートウォッチの依存症リスクは、
- スマホ依存症
- 運動依存症
の2点であると考えています。 そして、結論から書くと、スマートウォッチの依存症リスクは、スマホより危険である、と考えます。
スマホ依存症リスク
スマホ依存症の原因は、依存していた(過去形であることを祈りたい……)私がご存知の通り、
- 通知が無限に来るから気になる
- ランダム性の高いフィードバック
にあります。これだけ書いても分かりませんから、具体例としてTwitterの公式アプリを考えてみましょう。
Twitterの依存性の作り方
Twitter公式アプリは、推測ですが2018〜19年を分水嶺として、それ以前と以後では明らかに使い勝手が変わっています。大きなものは、タイムラインに広告を露骨に混ぜてくるところです。また、メンションやDMが来た時だけではなく、RT(リツイート)やいいね!が来たときにも容赦なく通知を飛ばしてきます。アプリ外のスマホホーム画面の、iPhoneでいうところの赤バッジはスマホの設定でオフにすることができますが、アプリ内の通知をオフにすることはできません。なぜなら、それが依存症を生む最大の仕組みだからです。つまり、下記のループです。
何かツイートする
→そのツイートに対していいね!が来る
→そのいいね!の通知が来る
→ドーパミンどばどば!で気持ち良くなる
→また何かツイートする
→今度はいいね!が来ない
→ドーパミンどばどば!が忘れられなくなり(習い性となる)、いいね!が来てないか確認してしまう
→以降、上記の繰り返し
という感じです。
キーとなるのは、下線を引いた「いいね!が来ていないか確認してしまう」です。つまり、報酬(いいね)がランダムで与えられ、それを強迫的に確認してしまうところにあります。このランダム性がポイントで、つまり当たりが来るかどうかわからない、パチスロ競馬競艇宝くじソシャゲガチャといった、射幸心を煽るギャンブルと同じ仕組みです。
先の記事でも書いた通り、SNS運営企業にとって、広告を1秒でも多く、1PVでも多く見てもらうのが自社の収益に直結しますから、そのために人間の生理的習性をハックすることで2021年のSNSは成り立っています。要するに、SNS依存症患者を生み出せば生み出すほど、SNS企業の収益につながる、ということです。テレビ依存症患者を生み出せば生み出すほど、TV局がCMスポンサー企業からの収益で利潤を上げられるように。つまり、SNS運営企業にとって、SNSユーザーはお客様というよりはむしろ(SNSの広告出稿者にとっての)商品そのもの、ということです。
スマホより凶悪なスマートウォッチ
しかしながら、いくら私たちが毎日休むことなく10分に1回スマホを触ってしまうからといって、スマホはカバンの底に沈めておけば、まだ手癖で触れてしまうことはありません(※1)。
※1:ということで、ポケットの中にスマホを入れておくというのは非常にオススメしません。
ところが、スマートウォッチはどうでしょう。そいつは、あなたの手首にずっとくっついています。これが非常にまずいです。
今のところ、私たちはスマホからは逃れるタイミングがまだあります。シャワーとかね。ところが、スマートウォッチはスマホ以上に私たちにピッタリついてきます。そして、新しいメールが来たとか、LINEが来たとか、Facebookで〇〇さんがいいねしましたとか、△△さんが新しい写真を投稿しましたとか、そういう通知を絶え間なく、絶え間なく、お知らせしてくるわけです。先述の「報酬(いいね)がランダムで与えられ、それを強迫的に確認してしまう」のリスクに、常に曝され続ける、というわけです。
その帰結が、心ここに在らず、気になるあの人とサシ飲みをしていても、通知が気になって気になってスマホ/スマートウォッチばかり見てしまう、顔はその人に向いていても、どんな質問に対しても生返事、潜在意識はずっとスマホ/スマートウォッチに向いている、立派な(?)スマホ依存症です。
数年前、知人が「就職すると男は腕時計のブランドで値踏みされる。そういうマウントから逃れられるからApple Watchは最高!ガジェオタで本当に良かった!」な〜んて言ってましたが、あまりにも高い代償を払っている気がしてなりません。
運動依存症リスク
スマートウォッチのもう一つの依存症リスク、それは運動依存症です。
FacebookやTwitterやInstagramの「いいね!」"Like"に世界中の何千万、何億という人が一喜一憂するのと同様に、スマートウォッチが絶え間なく収集している、
- 体重
- 歩行距離
- 歩数
- 体脂肪率
- 消費カロリー
- 脈拍
- 睡眠時間
といった、あらゆる情報で一喜一憂する羽目になります。私たちが「いいね!」の数、リツイート数、フォロワー数、PV数をはじめとする数字に弱いように、こういった数字を絶え間なく叩きつけられることで、スマホ依存症と同様、数字に対する強迫観念を増長させるリスク、運動依存症に陥るリスクがあります。
運動依存症については、あまり危険性が述べられていないかもしれません。だって、「スマホを捨てよ、町へ出よう」「スマホやネットやゲームをやめて運動しよう」って喧しく言われていて、まるで運動が唯一にして最大のソリューションみたいな言われようをされていますからね。
ところが、運動にも依存症リスクがあります。朝起きて近所を散歩するとか、週3でジムに通うとかならまだしも、スマートウォッチがお節介なまでに表示してくる数値に一喜一憂していると、「毎日1万5000歩歩かないといけないのに(これが認知の歪み!)、今日はまだ1万歩しか歩いていない。二つ手前の駅で降りて歩いて家まで帰らないといけない(認知の歪み!)」、で帰るのが遅れて寝不足とか、自分の身体の疲れを無視して目標必達(YouTubeに飛びます)させようとして疲労骨折とかいう、本末転倒なことになるわけです。
あすけんをやめた理由
かつて、あすけんというカロリー・栄養管理アプリを使っていましたが、あるタイミングでやめてしまいました。これも、結局数字の強迫観念に参ってしまったからです。おいしく健康的に食事を頂くのが第一義なのに、いつの間にか食事がただの栄養摂取源に成り下がり、苦痛になってしまっていました。
これと同じようなことが、スマートウォッチにも起こりうる、ということです。
ちなみに、運動依存症に摂食障害が併発するというのは、事実だと思います。鶏/卵問題であってどちらが先に来るかは人に依りますが。私の知人では、世間体は一部上場企業のエリートなのに、実態は摂食障害・運動依存症で私生活がガッタガタの悲惨になってしまった人物を知っています。それも複数人。共通項としては、とりわけ真摯で真面目で神経質で人の目が気になりやすい性質の女性、というのがあります。
アルコールへの依存を告白した勝間和代氏がスマートウォッチの紹介(YouTubeに飛びます)をして、高らかに運動の素晴らしさを語る(YouTubeに飛びます)たびに、「彼女は依存の対象を、酒からスマートウォッチ・運動にスライドさせただけなのでは?」という疑念が離れません。彼女の幸せを祈る限りです。
→と思ったら、2021年7月にスマホ依存症という語を使って、スマホを持ち歩かないチャレンジをしています。私と同じタイミングで、同志ですな(何様?)。
スマートウォッチ依存症の対処法は?
スマートウォッチを買わないことです。
スマートウォッチ、本当に要りますか?本当にそんなに自分の脈拍とか歩数とか睡眠時間とか逐一知りたいですか?無いと死んじゃいますか?心身の健康を手放して悲惨な目に遭って人生ぐちゃぐちゃになってでも手に入れたいものですか?
確かに、スマートウォッチを活用して、従業員や高齢者の健康管理を行うというソリューションがあり、これも上手く使えば有用かもしれません。しかし、一個人がこれ、要りますか?
時間を知りたかったら腕時計、歩数が知りたいなら歩数計があればよろしいのです。
スマホが登場当時には明らかでなかったリスクが後々に明らかになってきたように、スマートウォッチは目先の便利さと引き換えに、依存症リスクを常に背負い続ける代物である、ということが今後明らかになってくると予測します。少なくとも、私は買う予定はありません。
参考文献
- アダム・オルター『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』ダイヤモンド社
- アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』新潮新書
- マーク・キングウェル『退屈とポスト・トゥルース SNSに搾取されないための哲学』集英社新書
- カル・ニューポート『デジタル・ミニマリスト: 本当に大切なことに集中する』 早川書房
- デイミアン・トンプソン『依存症ビジネス――「廃人」製造社会の真実』 ダイヤモンド社
- マヌーシュ・ゾモロディ『退屈すれば脳はひらめく―7つのステップでスマホを手放す』NHK出版
- 石徹白 未亜『節ネット、はじめました。 「黒ネット」「白ネット」をやっつけて、時間とお金を取り戻す』阪急コミュニケーションズ
- 太田 肇『「承認欲求」の呪縛』 新潮新書
- 岡田 尊司『インターネット・ゲーム依存症 ネトゲからスマホまで』文春新書
- 樋口 進『ネット依存症』PHP新書
0 件のコメント:
コメントを投稿